シテ方・今村嘉太郎

~福岡が育てた能楽の継承者~

三代続く能楽師一家に生まれて
1980年、福岡に生まれた今村嘉太郎。わずか2歳半で能「鞍馬天狗」の稚児として初舞台
を踏んだ彼は、祖父・今村誠、父・今村嘉伸から稽古を受け、能楽師としての道を歩み始
めました。

「子供の頃に感じた言葉にできない感動を伝えたい」

この想いが、彼の能楽師としての原点です。東京芸術大学で学んだ後、大西智久に入門
し、2010年、29歳で独立。福岡を拠点に活動を続けています。

重習曲という「山」を越えて
能楽師にとって、「重習曲」と呼ばれる特別な演目があります。これらは技術的にも精神
的にも最高難度の演目で、能楽師人生の節目に挑むものです。
今村嘉太郎は、これまでに数々の重習曲に挑戦してきました:
2009年「猩々乱」
2012年「石橋」
2015年「道成寺」
2018年「望月」
2022年「安宅」
2024年「翁」
2025年「道成寺」(2度目)

特に「道成寺」は、能の中でも最も華やかで難度の高い演目の一つ。鐘への恨みを表現す
る「乱拍子」という特殊な足遣いの舞が見どころで、今村は2015年に初めて挑戦し、2025
年5月に再び舞いました。
今回の「楊貴妃」は、動きの大きい「道成寺」とは対照的に、ゆっくりとした優美な舞が
特徴。女性の心情を繊細に表現する鬘物(かつらもの)の真髄を、今村の舞でご堪能くだ
さい。