楊貴妃の物語
永遠の美女が愛した「果実の物語」

「一騎 紅塵 妃子笑」
この有名な漢詩の一節をご存知でしょうか。これは、玄宗皇帝が楊貴妃のために、遥か南
方からライチを早馬で運ばせたという、愛の逸話を詠んだものです。
楊貴妃が愛したライチは、当時の都・長安から5000里も離れた広東省の産地から、何日も
かけて新鮮なまま届けられました。一日で色が変わり、二日で香りが変わり、三日で味が
変わると言われるライチ。その儚さこそが、玄宗皇帝の愛の深さを物語っています。
現代の研究によれば、ライチには葉酸やビタミンCが豊富に含まれ、美肌効果が期待でき
る「美の果実」。楊貴妃の美貌の秘密は、このライチにもあったのかもしれません。ま
た、彼女はクコの実も毎日食べていたという記録も残されており、まさに「内側から輝く
美」を追求していたことが窺えます。
「比翼連理」の誓い――永遠の愛の象徴

「天にあれば、願わくば比翼の鳥にならん。地にあれば、願わくば連理の枝とならん」
この言葉は、玄宗皇帝と楊貴妃が七夕の夜に交わした秘密の愛の誓いです。比翼の鳥と
は、雌雄が一体となって初めて飛べる想像上の鳥。連理の枝とは、二本の木の枝が絡み合
い一つになったもの。どちらも、離れては生きられない深い愛を象徴しています。
しかし、この愛の物語は悲劇で幕を閉じます。安史の乱により都を追われ、馬嵬の地で楊
貴妃は非業の死を遂げました。その後、玄宗皇帝は愛する楊貴妃の魂を探し求め、方士
(仙術を使う者)を蓬莱の仙界へと遣わします――これが、能「楊貴妃」の物語となるの
です。
今回の公演では、白居易の「長恨歌」をもとに金春禅竹が能として完成させたこの演目
を、夢幻の世界でお楽しみいただけます。